
「多くのワーキングマザーからの悲鳴に近い声を聞いて、このまま放ってはおけないと思ったのです」と話すのは、(株)マザーネット社長の上田さん。自らも二児の母親であり、ワーキングマザーの総合支援サービス会社を経営する。
「自分で子どもを持ち、初めて今の社会はワーキングマザーにとって働きにくい環境であることを実感しました。急な残業や病気の時に、子どもを預けられるところはないし、公立の保育所に入所させるために出産の時期までコントロールしなければならないのは、何かがおかしいと感じていました。」
入社3年目で結婚した上田さんは、仕事を楽しみながらも、いつかは子どもがほしいと考えていた。念願かなって結婚6年目に妊娠。育児休暇制度を利用して出産に臨んだ。しかし、子どもが出来た喜びもつかの間、子どもを公立の保育所に入れたいと自宅近くの保育所を訪ねると、翌春からの入園申し込みに間に合わせるためには、7月までに出産するのが当然と言われてしまう。
「働く女性にとって出産はこんなに大変なのかと驚きました。二男の時は、言われたとおり7月に出産しましたが、今度は育児休暇を取得すると、長男は保育所を退所しなくてはならなくなり、二男と同じ保育所に入れないと言われたのです。市の窓口に何度も通ってやっと入所を認めてもらいました。」
一連のやりとりを通して、苦労をしているのは決して自分だけではないと実感した上田さん。ワーキングマザーが悩みを打ち明けたり、情報収集できる組織をつくろうと決意した。1994年「キャリアと家庭」両立をめざす会をたった一人で発足。第二子出産の3日前に新聞に取り上げられると、電話が鳴り続け、ワーキングマザ−の悲痛な相談が後を絶たなかった。今まで孤立していた彼女たちは、つらい状況を訴え電話口で泣き出す人も少なくなかった。「私自身も大切な契約があり、高熱を出した子どもを連れ、客先に出向いたこともありました。だからこそ、彼女たちの気持ちが痛いほどわかるんです。」
1999年には、CAREER&FAMILYという情報誌を発行。毎月アンケートを取り、結果を誌上で公表し、情報提供を続けた。その後、会を作って7年が経過し、電話や手紙、メールで寄せられた悩みは約2万件となった。一番多く寄せられた悩みは「子どもが病気の時に預かってくれるところがないこと。」「昨日は私が休んで、今日は夫は休んでくれました。子どもの熱がまだ下がらなくて、明日はもうどちらも休めません…」そう語るお母さんの後ろで、子どもも泣いている。
働くお母さんを応援する活動をしているのに、本当に困っているときに助けてあげられない。考え抜いた結果、「働くお母さんたちの声を世の中に伝えることが、自分自身の使命」と感じ、17年間勤務した会社を思い切って退社し、マザーネットを創業した。周囲は「どうしてそんな大変な道を選ぶのか。何かあったら、人生を棒にふってしまう」とほとんどの人が反対、しかし二人の子どもたちは「お母さん、がんばれ!」と背中を押してくれた。


サービスの柱は“チャイルドケア”と“家事代行”のケアリスト派遣だ。“チャイルドケア”は病気の子どもケア、病院への付き添い、保育園への送迎など以外にも出張に子どもを同行した場合の、子どもケアまでカバーしている。子どものケアに加え、母親のケアにも重点を置くため、シッターではなくケアリストという独自の名称を用いた。そして子どもの安全を十分確保した上で、空いた時間があれば料理、掃除、洗濯などの“家事代行”も行っている。
上田さんが一番気を使っている部分、それはやはり“心”が通うサービス。「お客様のご要望がなくても、お客様のお宅で求められていることを肌で感じて、サービスを行うようにと、ケアリストに指導しています。麦茶が少なくなっていれば沸かしておく。キッチンのシンクを磨いておく。お客様が疲れて帰ったときに、どうしたら気分がやわらげるかを、常に考え、行動しています。」
そのためにスタッフ採用のハードルを厳しくしているそうだ。現在のスタッフは300名程になるが、最低限の基準は看護師、保育士の資格保有者もしくは子育て経験。そして面接には一人最低1時間はかけてきたという。そんな厳しいスタッフ基準に、更に厳しい条件がある。それはなんと料理の腕前!「ワーキングマザーは健康な体が資本。野菜たっぷりの料理を食べていただいています。」
そんな質の高いサービスを提供するマザーネットは現在、大阪本社の他に、東京、長野、福岡に支店を展開しているが、全国規模で支店開設の要望がある。


最近では法人契約も増えてきたそうだ。「ここ1〜2年ですが、ワーキングマザーをサポートすることが、企業メリットになるとの理解が増えてきていると実感しています。働く女性にやさしくない企業には人材が集まらなくなっていくと思います」。そんな企業が増え、ワーキングマザーに優しい社会になる、それが上田さんの願いだ。
最後に今後の展望についてうかがってみると、驚きの答えが返ってきた。「本当は、私たちのような会社がいらない社会になることが一番いいのでしょう。でも、必要とされている今は、一人でも多くの働くお母さんの力になることが私の使命だと思っています。」
そのためにスタッフ採用のハードルを厳しくしているそうだ。現在のスタッフは300名程になるが、最低限の基準は看護師、保育士の資格保有者もしくは子育て経験。そして面接には一人最低1時間はかけてきたという。そんな厳しいスタッフ基準に、更に厳しい条件がある。それはなんと料理の腕前!「ワーキングマザーは健康な体が資本。野菜たっぷりの料理を食べていただいています。」
そんな質の高いサービスを提供するマザーネットは現在、大阪本社の他に、東京、長野、福岡に支店を展開しているが、全国規模で支店開設の要望がある。